「ロックはワルの美学があるからこそカッコ良い」
そう思いませんか?
ガンズ・アンド・ローゼスはまさに、それを体現したバンドでした。
若い人は知らないでしょうね。今なお現役ではありますが・・
ガンズは私が高校生だった80年代に軟弱ロック界をしばくが如くセンセーショナルに出現しましたが、
私はフォークが大好きな善良市民だったので、当時は全く興味がありませんでした。
しかし数年後、TV「タモリ倶楽部」の「空耳アワー」で事件は起こります。
「I love that staff」が「あ、なんですか~?」
に聴こえるという、手拭いレベルの空耳だったんですが、私は使用された曲に耳を奪われました。
それがガンズの「ナイトレイン」だったんです。
後日、この曲が収録されたアルバムをレンタルし、胸をときめかせながら聴いてみました。
??・・全然おもしろくない・・
空耳アワーで使われた「ナイトレイン」のサビだけは辛うじて聴けますが、
他の曲は全く良さが解らない・・・
無理もありません。
当時の私は、ロックと言えばせいぜいボン・ジョビ程度の免疫しかなかったのですから。
一応せっかく借りたアルバムなんで何気に聴き続けていたら・・・
・・・んっ、なんだなんだ、この破天荒なサウンドと曲構成はっ!
この新鮮な驚きと共に、衝撃的な面白さが津波のように襲ってきたんです。
このアルバムこそ、「アペタイト・フォー・ディストラクション」というガンズのデビュー作であり、伝説の名盤だったのです。
超ハマった私は、毎日これしか聴かない時期がしばらく続きました。
聴くだけじゃ飽き足らず、バンド譜買ってギターコピーに没頭したり、
スラッシュのスタイルに憧れて、革ジャンとウエスタンブーツを買ったりと、
かなり影響されましたね。
しばらくして熱が落ち着いた後、これ以外のアルバムも全て聴いてみましたが、不思議とハマらない・・・
悪くはないのですが、アペタイト~に比べると、明らかに何かが足りないのです。
これはどういうことなんだろうと、私なりに考えてみました。
まず思ったのは、このアペタイト~は、神がかりならぬ悪魔がかっている、ということです。
つまり、聴く者の感情を高揚させて、攻撃的、破壊的にさせるヤバいアルバムなんです。
その昔、ロックを聴くと不良になると言われてましたが、
それは本当だと思います。ただし、上質のロックに限って。
昔、ビートルズの「ヘルター・スケルター」が犯罪者チャールズ・マンソンに利用されたケースや、ロックのライヴで暴動が起きやすいことでも明白ですが、
ロックという音楽には悪魔の力が潜んでいます。
私に言わせれば、それがなければロックではない。
悪には「華」があるので人々は魅了されてしまう。
この世に善と悪が共存する限り、それは揺るがないでしょうね。
かなり大きなこと言ってますが、話をアペタイト~に戻します。
このアルバムには全編、ワルいな~という空気が充満してます。
曲云々の前にそもそも、このバンドメンバーの素行のワルさは有名でした。
アクセルがキレて誰かをボッコボコにしてる横で、
ギターのスラッシュがニヤけながら煙草吹かしている・・・
そんなイメージのバンドですよガンズって。
それほど、アペタイト~には、リアルなワルさが滲んでますが、
特に私が一番好きな「ナイトレイン」にそれは凝縮されています。
まず、歌詞からして、
ホテルでさんざヤリまくった男が、昼間まで寝てる相手の女を叩き起こして、
「テメェのクレジットカードで酒買ってこいや。それで今夜もブッとびながら楽しもうぜ」
というような内容ですよ。
イントロのギターでは、バリ歪ませたイジーがサイドで唸り、
スラッシュのリードは、弱い歪みにノン・ビブラートで前線に出てくるという不敵さです。
また、Aメロの随所で聴かせる、
ふてぶてしいハーモニクスと噛み付くようなリフの絡みも相当ワルいですよ。
ちなみに、中間ソロ前半に一瞬無音になる所がありますが、
最初聴いた時は「えっ、なんで?」って感じで新鮮でした。
そして極めつけは、アクセルの堕天使のような、あのボーカルですよ。
本当にこの曲はワルの魅力を存分に聴かせてくれます。
もちろん、他の収録曲も最高なのですが、麻薬のことや放送禁止用語を連発する曲もあるので良い子は聴かない方がいいでしょうね。
私はガンズにハマった勢いで、エアロスミスやメタリカもかじりましたが深い所までは行けませんでした。
やっぱり私は、ロッカーの資質は乏しいのかも知れません。
ただ、エアロスミスの「バック・イン・ザ・サドル」と、メタリカの「エンター・サンドマン」は、たまらなく好きです。
さて、そろそろ纏めましょう。
ガンズのアルバムの中で「アペタイト・フォー・ディストラクション」だけが私を虜にした理由とは・・・
ガンズのメンバーが持つ飾らない本物のワルさがサウンドの中に生き生きと存在しているから。
だと思います。
アペタイト~以降は音楽的に成長したかも知れませんが、ワルさだけが薄れてしまったのか、飾られてしまったのか・・・
だから何かが物足りなかったのでしょう。名曲は数多く残してるんですけどね。
ついでに、私がロックという音楽を定義付けするならば、それは・・・
ワルの美学を追求する音楽
これでしょうな。
だからこそロックは、カッコ良いか悪いかの基準しかない特殊な音楽ジャンルであり、
聴く者の内に眠る破壊欲を解放する音楽であって、
愛と平和とは無縁の世界なんです。
これはあくまで私個人の意見なのであしからず。
最後に余談ですが、
昔、アメリカ人女性がいるカラオケの席で「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」を熱唱したらドン引きされました。
その前にライブで、アメリカ人男性客の前で演奏したらウケてたのに・・・
アメリカ人って難しい・・・みなさんも気を付けて下さいね。
今回も最後まで読んで頂き、大変ありがとうございました。