三段跳びの助走のコツと助走距離の決め方【元県高校記録保持者が解説】

三段跳の助走って難しいですよね。スピード出せばいいってもんじゃないし、リズムも大事。

「自分はどれくらい助走距離をとったらいいんだろう?」と迷っている人も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、三段跳の沖縄県高校記録を30年間保持した筆者が、三段跳の助走のコツと助走距離の決め方について解説します。

今回の内容を理解して試行錯誤していけば、より自分の実力を発揮できる助走のやり方と助走距離が固まっていくはずなので、最後まで噛み砕きながら読んで下さいね。

それでは本編に行ってみましょう!

■ 三段跳の助走を決定づける3つの局面

三段跳の助走は、走幅跳の助走とやり方が違います。

走幅跳は助走を活かす跳躍をすべきですが、三段跳は跳躍を活かす助走をすべきです。

それでは、跳躍(ホップ・ステップ・ジャンプ)を活かす助走について考えていきましょう。

最初に押さえておきたい事ですが、三段跳における助走の目標はズバリ、

良いテンポとリズムでトップスピードに乗り、踏切へ繋ぐ

これです。これを常に頭に入れといて下さい。

良いテンポとリズムこそが各踏切のタイミングを捉える鍵であり、

スピードこそが距離を稼ぐ鍵になります。

これらの条件が揃ってはじめて、ビッグジャンプが生まれる訳です。

この「良いテンポとリズムでトップスピードに乗る」状態に持っていく為に、

助走距離や加速のつけ方が選手それぞれで変わってきます。

今回は、助走スタートからトップスピードに乗るまでの加速局面

跳躍リズムを掴むリズムキープの局面

テイクオフ準備の踏切前3歩の局面

という3つの局面に分けて、それぞれのポイントを解説していきます。

加速局面

まずは助走のスタートからトップスピードに乗るまでの加速局面です。

スタートは、止まった状態から走り出すパターンや、

歩いたり小走りした後に走り出すパターン、

加速のつけ方も、徐々に力を入れていくパターンや、

最初から全力ダッシュするパターン、いろんなやり方があります。

どれが正解というのはないですが、自分にとって、

加速に勢いがつくのはどれか?

気持ち的に勢いに乗れるのはどれか?

適度にリラックスできて、次の局面にスムーズに移行できるのはどれか?

を考えながら色々試してみて下さい。

ちなみに私は、止まった状態から全力ダッシュするパターンでした。

その前は、最初に小走りしてましたが、

止まった状態からダッシュした方がキックに弾みがつき、

良いリズムもとれることがわかって、これに落ち着きました。

あと、スタート前の集中力とイメージ力も、かなり重要なスキルです。

助走路に立ったら、集中しながらも適度に身体の力を抜いて、良い風が吹くのを待ちましょう。

ちなみに私の場合、試技前の練習で跳躍イメージは行ってるので、本番の試技直前では跳躍イメージはしませんでした。

ただひたすら心を無にして、身体が踏切板に吸い込まれる感覚を意図的に作ってましたよ。

良い精神状態で気持ち良くスタートが切れれば、キックにも手応えが生まれグイグイ加速できるはずです。

「俺の跳躍でスタンドをくぎ付けにしてやる」という自信が、

助走を加速させる最大の要因、

踏切に対する怖さや自信の無さが、

助走にブレーキをかける最大の要因

であることをゼヒ、覚えておいて下さい。

さぁ、トップスピードに乗ったら、次のリズムキープの局面に移りましょう。

リズムキープの局面

三段跳の場合、トップスピードに乗ってすぐに踏切るのではなく、

跳躍リズムを身体に馴染ませる為のリズムキープの局面が必要になります。

なぜなら、跳躍リズムを掴めないまま踏切ってしまうと、

ホップの踏切角度や滞空時間が狂ったり、

ステップやジャンプの踏切で接地のタイミングが狂って、

減速したり潰れてしまうからです。

逆に、大して助走スピードが出てなくても、跳躍リズムがちゃんと掴めていれば、

各踏切がまとまって、案外記録は伸びたりします。

なので、このリズムキープの局面は大変重要です。

もちろん、ここで目指すのは、より速いスピードで、より精度の高いテンポとリズムを刻むことです。

ところで・・

テンポとかリズムってどういうこと?と思った人もいるかも知れませんね。

テンポとはつまり、ピッチとキックの強さが安定した状態

ざっくり言うと、200m走でコーナーを抜けて直線に入った時のような走りです。

リズムとは、接地にアクセントを付けること

ざっくり言うと、一歩一歩が僅かに踏み切っているような走り。

但し、このアクセントを付け過ぎるとスピードを殺すことになるので要注意です。

ちなみに私は、このリズムキープの局面を習得する為に、

局面が切り替わる地点にマークを置き、

スタートからマークまでは加速することだけに専念して、

マークからはテンポとリズムを意識して走る練習を徹底的にやりました。

最初は局面の切り換わりがぎこちなかったのですが、

慣れればマーク無しでもスムーズに移行出来るようになりましたよ。

さぁ、スピードに乗って、リズムも掴めたら、最後は踏切前3歩の局面に移ります。

踏切前3歩の局面

助走の最終仕上げが、踏切前3歩の局面です。

この局面の目的を一言でいうと、

リズム良くスピードに乗った走りを踏切に変換することです。

一流選手の跳躍を見ても、リズムキープの局面の走りそのままに踏切っているようにも見えますが、

実際には、ここで若干のピッチとストライド、重心軌道の調整を行ってます。

調整とは、踏切で減速せず理想的な角度で跳び出すために、

ピッチを速め、ストライドを狭めて、重心を落とすことです。

但し、若干です。やり過ぎるとせっかく作ったリズムが崩れて、走幅跳みたいに高く跳び出したりしますから。

また、ここが上手く出来ずに不安定な人は、僅かなファウルが多くなったり、

跳躍自体も不安定になって記録もバラつきます。

この微妙な調整は当然個人差があるので、普段のリズムジャンプ系の練習で、

狂いの無い理想的な踏切前3歩を徹底的に固めるしかないです。

言うまでもないですが、

三段跳は、助走はじめから着地までの流れが記録を決定付けます。

どこかが狂っても、どこかで挽回できることはないのですが、

特に、この踏切前3歩の局面は、最も狂ってはいけないポイントだと言えるんです。

■ 助走距離を決めよう

さぁ、ここまで話した3つの局面の目的と、自分の特性をよく踏まえて、最終的に助走距離を決めましょう。

局面ごとの目的が達成できるなら、助走距離は短いに越したことはないです。疲れないんで。

最初は短めに設定しておいて、徐々に伸ばしながら様子を見るやり方も有りでしょうね。

ただ、これは選手のスプリント能力や特性によっても変わってくる問題なので、

練習で何度も試行錯誤して、自分にとってベストな距離を見つけて下さい。

繰り返しますが、大事なのは3つの局面の目的が達成できるかどうか?です。

私の場合は、35~40mの範囲を行ったり来たりして、最終的には38mあたりで落ち着きました。(100mのスピードは11秒7程度です)

ちなみに、試合本番で歩数を変更するのはアウトです。

それは、どうにも踏切が合わない場合の最終手段ですからね。

そういう事態にならないよう、普段から助走練習をシッカリとやっておきたいですね。

■ ファウルを減らすには

スタート地点を何度ずらしてもファウルしたり、踏切板に足が乗らないような人がいますが、

そういう人は既述の3つの局面のどちらか、もしくは全部の走りが不安定(歩幅が定まってない)なのが原因です。

助走を安定させてファウルを減らすには、各局面の走りに近い練習を数多くこなして、身体にも頭にも感覚を覚え込ませるしかないです。

例えば、加速局面はダッシュ系の練習(30~50m)、

リズムキープの局面はテンポ走系の練習(150~200m)、

踏切3歩前の局面はリズムジャンプ系の練習(詳しくは三段跳に有効なトレーニング10選を参考)、

総仕上げに、全助走で各局面をスムーズに繋げる練習を行う、といった具合です。

結果これらは、助走スピードやリズム感を高める練習にもなっています。

但し、せっかく頭と身体に覚え込ませても、本番で緊張したり、ファウルを怖れて縮こまった走りになると意味が無いので、

集中力を高める為のメンタルトレーニングやイメージトレーニングも併せて行った方が良いでしょうね。

私の場合は有り難いことに、顧問の先生から基礎練習をシッカリ叩き込まれたので、ファウル

で失敗することは少なかったです。

■ あとがき

さぁ、みなさんの頭の中で良い助走イメージは掴めたでしょうか?

今回私が述べたことを分かり易く見せてくれている、フリスト・マルコフの跳躍も参考にしてみて下さいね。

私は高校時代、100m11秒後半ほどのスピードしかなかったにも関わらず、三段跳で14m76まで記録を伸ばすことができました。

それは他ならない、助走の安定性とホップの上手さが自分にはあったからだと思ってます。

みなさんも練習を積んで、自分にとって理想的な助走を完成させて下さいね。

理想的な助走が出来れば、理想的なホップが出来る訳ですが、そのコツについては下記の記事でまとめてるので参考にしてみて下さいね。

今回も最後まで読んで頂き、大変ありがとうございました。


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