三段跳びは専門性が高い種目だけに、どうやって練習したらいいのかわからない人が多いのではないでしょうか?
そこで今回は、三段跳びの沖縄県高校記録を30年間保持した筆者が自身の経験を元に、三段跳びに有効と思われるトレーニングを10個紹介します。
もちろん、選手によって合う合わないがあるかも知れませんが、今回紹介するものが何かしらヒントになれば幸いです。
一応、陸上選手に必須なスプリント系、パワー系、リズム系の基礎トレーニングを普段から行っている人向けに話をしてますので、その点は御了承下さい。
CONTENTS
1. イメージトレーニング
① 助走スタート地点、踏切板、目標とするホップ、ステップ、ジャンプの着地点の計5ヵ所にマークを置く(踏切板がある場合は4ヵ所)
② 踏切数m手前より歩いて進みながら、各マークに到達するように、実際に跳んでいる動作を身体も動かしながらイメージする。
1)助走からホップの踏切イメージ
● 踏切地点に身体が吸い込まれていくような感覚、最後の着地まで加速し続けるような感覚をイメージしながら助走をスタートする。
● 踏切3歩前からは、テンポ良くリズミカルに弾む感覚と、踏切板にドンピシャになる高揚感をイメージする。
● 踏切1歩前では、重心を落とし過ぎない(10cm程度の感覚で)
● 踏切では、後傾せず上体を垂直に立て、踏切板が重心の真下を通る直前に板をトンッと押すように跳び出す。
● スピードを殺さないよう、腕と反対脚は鋭く振り上げる。
2)ホップでの空中動作イメージ
● 踏切った瞬間から脱力し、十分リラックスしながら身体の軸を垂直に保つようバランスをとる。
● 踏切脚が自然と前に出るように腕を運ぶ(シングルアーム、ダブルアーム問わず踏切脚側の肘を後方へ持っていくよう意識する)
3)ステップの踏切イメージ
● ホップ空中で下降する所から身体の軸を踏切脚方向へ捻り、その捻れが元に戻ろうとする力を利用して、両腕、両脚を爆発的に踏切でクロスさせる。
● 踏切脚は地面を引っ掻くように(ムチがしなるように)スイングするが、接地は足裏全体というよりも、踝(くるぶし)で地面を捉えるような感覚で。
● 接地した際、上体は腰(大臀筋の上部)に引っ掛けるようにシッカリ乗せる。
● 地面の反発を最大限に活かす(衝撃を和らげる)腕振りの軌道の高さとタイミングを掴む。跳び出した瞬間、肩も使ってブロック(振った腕に急ブレーキをかけて身体を浮かすこと)をする。
● 振上脚(リードレッグ)の前方への鋭い振りと、腕振り同様にブロックも意識する。
4)ステップの空中動作イメージ
● 基本的にはホップの空中動作と同じ。但し、ホップよりは時間的に余裕があるので、その分「タメ」を意識して作る。
5)ジャンプの踏切イメージ
● 基本的にはステップの踏切と同じ。空中で「タメ」たエネルギーを踏切で爆発させ、思いきり高く跳び上がるイメージで。
6)ジャンプの空中動作イメージ
● どこまでも高く遠くへ伸び上がるイメージで。
● 着地手前では両脚を頭上ほど高く上げる。
ある意味、これは一番重要なトレーニングなので最初に紹介しました。
他9個のトレーニングは、これの延長で行われると思って下さい。
三段跳における最大の鉄則とは、踏切手前から最後のジャンプの踏切まで一貫して、身体の軸を真っ直ぐ垂直に、かつ強固に保つことです。でないと、どこかで失速もしくは潰れてしまいます。
この身体の軸のバランスを保つ為に両手両足が動くということと、身体の軸がエンジンとなって両手両足が駆動し推進力を得ることを前提にイメージして下さい。
このイメージの完成形が世界記録保持者ジョナサン・エドワーズの跳躍です。
あの鋼のように強靭な身体の軸を駆使してこそ、あれだけの高速ジャンプが実現できた訳です。
その他、一流選手の映像を観るのも良いイメージを作るのに有効な手段ですが、なるべく自分の個性に近い選手を参考にした方が良いでしょう。
でないと逆効果になる場合がありますので。自分の身体感覚を最優先にしてイメージを固めて下さい。
このトレーニングは、あくまで理想のイメージを頭に刻むのが目的なので、最初はゆっくりでも、途中で動きを止めたり、同じ箇所を何度繰り返しても構いません。
イメージが固まってきたらスピードを上げていきましょう。
実際の目標距離を歩きながら行うのは、跳べる手応えを掴む目的もあるので、無理な目標設定は止めましょう。
実際のピットでやるのが理想ですが、スペースがあれば何処ででもできます。馴れたら歩かずにその場でも出来るようになります。
精神を集中して、よりリアルなイメージの世界に没頭してみて下さい。クセになるくらい楽しいですよ。
普段、道を歩いてる時に出来るのが、踏切のイメージトレーニングです。
やり方は簡単。歩いていて、近づいてくる地面の何かを踏切板に見立て、踏切るイメージをするだけです。
要領は既述のホップの踏切と一緒です。
しかしこの場合、足が合ったり合わなかったりする訳ですが、これがミソです。
反対足になるくらい合わない時は諦めますが、それ以外は何とか歩幅を調整して踏み切ってみる。
どんな具合だろうが、ベストな踏切になるようイメージすることで、踏切前の調整感覚が身に付きます。
実際の試合でも活かされると思いますよ。ぜひ習慣にしてみて下さい。
※ちなみに、日本と世界の一流選手の動画を集めた別記事【動画付】三段跳の世界記録・アジア記録・日本記録・学生記録・高校記録・中学記録・U20/U18記録まとめと【動画付】三段跳びの世界歴代ランキング記録まとめもイメージの参考にしてみて下さいね。
2. 動きのトレーニング(振り出し)
① ゆっくりした腿上げのリズムで片足(ホップ・ステップの踏切脚)を連続でスイングする。1セット約10回ほどを3~5セット行う。
② 反対脚(ジャンプの踏切脚)でも同様に行う。
● 既述の「イメージトレーニング(ステップの踏切)」の要領を踏まえて行う。
● 最初は小さくゆっくり、徐々にスイングを大きく速くしていく。
● 脚が上がった時に背中は曲げず胸を張り、身体の軸を真っ直ぐ垂直に保つ。
● 身体の軸の捻れが戻ろうとする力を使って、足が地面をアタックした時に大きな音が鳴るほど、ダイナミックで素早いスイングを目指す。
● 足が地面をアタックした時に、より重心が浮き上がるスイングのタイミングと、腕振りのタイミングを掴む。
これは、スイングしながら地面をバウンドするという、三段跳び特有の動きを身体に染み込ませるには一番のトレーニングだと思います。
毎日の日課にした方が良いでしょう。身体が地面を捉える技術的な向上はもちろん、筋力強化にも有効です。
3. プライオメトリクス・トレーニング
① 高さ30~50cmほどの適当な段差もしくはプライオメトリクスボックスの縁に背中を向けて立つ。
② 後方に両脚で降り、すぐさま元の段上に脚を伸ばしたまま跳び戻る。
※1セット5回前後を2~3セット行う。
● いかに接地時間を短く、高く跳べるかに意識を集中して行う。
● 降りる時と昇る時の空中では脱力、接地の瞬間だけグッと力を込めるアクセントを意識する。
● 接地の瞬間、踵から頭頂部までが硬い一本の棒になって跳ね返るイメージで行う。同時に、それを最適にサポートする両腕の振り方とタイミングを掴む。
瞬発力を鍛えるプライオメトリクス・トレーニングは様々なやり方がありますが、私の経験上、これが一番有効だと思います。
このトレーニングは、真っ直ぐ硬い身体の軸を作り上げるのに有効です。極めれば、実際の三段跳びでも接地時間が短くて、反発力の強い踏切が出来るようになります。
このトレーニングは、適当な段差があれば何処でもできますが、必ず地面が綺麗に平坦になっている場所で行って下さい。
地面にくぼみがあったり、石が転がってたりすると捻挫する危険性があります。
4. バーベルジャンプ
バーベルを担ぎ、その場で両脚を前後に連続で交差させる。※1セット10回ほどを3~5セット行う。
● 高く跳ぼうとせず、低空で脚を交差させるだけでOK。
● 両脚は開き過ぎないようにする。実際の三段跳踏切の膝角度に近いくらいの開きで(普通に立った状態から前後一足分ほど)
● バーベルのウェイトは最初は軽めで行い、要領を掴んだら90%の力で10回できるほどの重さまでもっていく(私は100kgでやってました)
● 脚を開いた時、腿だけで衝撃を受けるのではなく、腰を入れて大臀筋の上部にウェイトを乗せるような感覚で行う(ステップ、ジャンプの踏切イメージ)
ウェイト・トレーニングの1つですが、三段跳にはこれが一番効くと思います。
重いバーベルを担ぐので、必ず腰にベルトを巻くことと、両側にサポートする人を立てるようにして下さい。
5. 補強トレーニング6種
腕立て伏せをしながら空中で手を叩く。
脇は開けて胸は低く下げなくてよい。
手の接地時間を短く、且つ上体を高く浮かせることに意識を集中させる。
これを連続で10回以上行う。
腕を上に伸ばした仰向けの状態から、骨盤を支点にして素早く身体をVの字に折り畳む。
これを連続で10回以上行う。
ポイントは、腕と脚をなるべく曲げずに速いスピードで行うことと、身体が伸びてから曲げに行く折り返しの瞬間に一番負荷がかかるようにする(地面では休まない)
※ 柔らかいマットの上だとやり易い。
うつ伏せで頭の後ろに手を組み、脚を伸ばした状態で背中を反る。
これを連続で50回以上行う。
ポイントは、脚は曲げずに伸ばし、背筋と大臀筋に負荷がかかるように意識して、なるべく速いスピードで行う(地面では休まない)
ハムストリングを強化するトレーニング。
膝をついた状態で直立し、誰かに両足首を押さえてもらう。
膝を支点にゆっくり前に倒れ、再び直立に戻る。これを5~10回行う。
なるべく上体を曲げずに、筋力に応じて倒れる角度を調整する。
足を引っ掛ける隙間等があれば一人でも行える。
ふくらはぎを鍛えるトレーニング。
片足で立ち、つま先で連続ジャンプをする。
膝は軽く曲げるくらいで、主にふくらはぎのヒラメ筋に負荷がかかるようにする。
これを連続で50回以上、反対脚も同様に行う。
その場で片足けんけんを行う。
ポイントは、なるべく高くジャンプして空中でホップーステップの動作を再現(脚の巻き込み、腰入れ、腕振りと振上脚のブロック等)すること。
これを連続で10回以上、反対脚も同様に行う。
自宅でも手軽に出来て、効果的な補強トレーニングです。毎日の日課として実践してみて下さい。
6. リズムジャンプ
5割ほどのスピードで、3歩おきに同じ脚でホップのように踏み切る。
これを連続で5回以上行う。
● 跳び出す時はホップの踏切角度で、地面を押すように脚を伸ばしきる。
これをなるべく接地時間を短く、更に加速をつけるように行う。
● 鋭い腕振りとブロック、鋭い振上脚のリードとブロックを上手に行う。
● 踏切後の脱力から、次の鋭い3歩へのメリハリを意識する。
● 全体を通してスピードとリズムを一定に保つ。
このトレーニングは、走幅跳とは別物である、ホップの踏切感覚が身に付きます。
毎日でもやった方が良い必須トレーニングです。
3歩おきが基本ですが、1歩おきの連続パターンも加えれば効果的です(ミニハードルの使用も有り)
※ ホップの技術的なことは別記事、14mを跳ぶためのホップのコツ~で解説しているので参考にしてみて下さい。
7. 助走付ジャンピング
数歩走った後、ステップの踏切脚で前方に低く跳び出し、反対脚でジャンプを跳ぶ。
これを3回以上連続で行う。
● 三段跳で最も失速するジャンプをあえて速いスピードに対応させるトレーニングなので、可能な限り速い助走で行う(フォームが崩れない範囲で)
● ジャンプの前では低く跳び出してスピードを殺さないようにする。
緩やかな下り坂を利用して行うのも効果的。
8. ホッピング
軽く助走をつけてホッピング(けんけん)を5~10歩跳躍する。
反対脚でも同様に行う。
● 一番重要な点はフォーム。距離を稼ごうとしがちだが、空中での脚の巻き込みや腕のアクション、腰入れ、接地のタイミング等を崩すことなく行う。
その上で、どれだけスピードと距離を稼げるかに集中する。
● あえてスピードを落とし滞空時間を長くして、よりフォーム重視のトレーニングにするのもOK。
● 両脚で同じように行うが、必ず腕のアクションは実際の三段跳の時と同じくする(シングルアーム or ダブルアーム)
※ 様々なホッピングのやり方について別記事、14mを跳ぶためのステップのコツ~の「ステップの効果的な練習方法」で解説しているので、こちらも参考にしてみて下さい。
9. 助走練習
実際のピットで本番さながらに助走してホップまで踏切る。
課題をチェックしながら5~10本行う。※ スパイク着用
● 加速の局面では、リラックスしながらトップスピードに乗せる。
● 踏切準備の局面(踏切前の5~7歩)では、トップスピードを維持したまま安定したテンポとリズムで走る。
● ホップの踏切では既述のイメージどうりに鋭く跳び出す。
● 全体を通してリラックスを心掛け、踏切に対して決してビビらず、むしろ踏切板に身体が吸い込まれていくイメージで走る。
上記のポイントを踏まえながら、自分にとってベストな助走距離を決めましょう。
私も色々試しましたが、最終的に38mくらいに収まりました。
助走はスピードも重要ですが、テンポとリズムを上手く取らないとファウルが多くなり、ステップで潰れる危険性も高くなるので、その点を十分意識して下さい。
※ 助走の技術的なことは別記事、三段跳びの助走のコツと助走距離の決め方で詳しく解説してるので参考にしてみて下さい。
10. 短助走三段跳
実際のピットで三段跳びを行う。
最初は1歩助走から始め、2歩、3歩と増やしていき、最終的に10歩くらいまで増やす。※スパイク着用
● 最初は1歩から始めるが、その歩数で納得がいく跳躍を安定して跳べるようになるまで歩数は増やさない。
● 毎回、砂場に印を付けながら、その歩数の自己ベストを目指して跳躍する。
その日の歩数ごとのベストを記録して、次回の目標記録にする。
このトレーニングは特に初心者や、腕振りのフォームや踏切脚を変える人には有効なトレーニングです。
記録重視でやることにより、限られた歩数(速度)の中で、その人が一番遠くへ跳べる身体の使い方が身に付きます。
いきなり10歩まで増やしてはダメです。歩数を増やしたい気持ちを抑えて、じっくり自分の跳躍の形を仕上げましょう(1週間で1歩づつ増やすペースでもOK)
跳躍を動画で録ったり、誰かに見てもらってフィードバックを頻繁にした方が上達は早いです。
身体への負担が大きいトレーニングなので、適度に休みながら跳ぶこと。
毎日ではなく、週2~3回の頻度で良いでしょう。
あとがき
冒頭でも触れましたが、今回は陸上選手に必要な基礎トレーニング
なので、大事な基礎トレーニングを毎日シッカリやっ
ちなみに、紹介したメニュー中の回数やセット数はあくまで参考な
あと、練習メニューの名称は私が勝手に付けたもので、正式名ではありません(正式名があるかどうかも不明です)
以上、若きトリプルジャンパー諸君に少しでも参考になれば私
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。